「どんな家を建てるか」を考えるとき、「敷地」と「建物」の大きさを考える必要があります。ただし、敷地の大きさに合わせて自由に増築できるわけではありません。所有者はもちろん、周りに住む人々の快適性や安全性を考慮し、法律や条例でさまざまなルールが定められています。
このような規制ルールの代表となるのが、建蔽率(建ぺい率) (以下、建ぺい率) と「容積率」です。この2つを知らずに土地を購入してしまうと、土地の規制で建物が予定より小さくなってしまい、後悔することになるかもしれません。そこで、不動産専門家のご指導のもと、「建ぺい率」と「容積率」とは何かを詳しく解説していきたいと思います。
建ぺい率とは、一言で言えば「敷地面積(建物を建てるための土地の面積)に対する建物面積(真上から見た建物の面積)の割合」です。計算方法は次のようになります。

例えば、敷地面積132平方メートル(約40坪)に建築面積66平方メートルの建物を建てた場合、建ぺい率は50%。
土地を無駄なく有効利用して建物を建てたいと考える人もいるかもしれませんが、開発しすぎた家屋は防災や換気の観点から好ましくないとされています。そこで、一定の空き地を作り、広々とした建物を建てるよう誘導するために、建築基準法により建物の建ぺい率に制限が設けられています。
また、建物のカバー率は地域によって異なります。それは地域ごとの都市計画が異なり、住宅地か商業地かなど、自治体ごとに細かく用途が分かれているためです。その使い道は「用途地域」と言い、全部で13種類あります。それぞれの建ぺい率の制限がわずかとはいえ、異なります。ここでは住宅関係の「用途地域」をご紹介します。
用途地域別の概要
- 第一種低層住居専用地域 → 低層住宅専用地
- 第二種低層住居専用地域 → 小規模な店舗の立地を認める低層住宅の専用地域
- 第一種中高層住居専用地域 → 中高層住宅の専用地域
- 第二種中高層住居専用地域 → 必要な利便施設の立地を認める中高層住宅の専用地域
- 第一種住居地域 → 大規模な店舗・事務所の立地を制限する住宅地のための地域
- 第二種住居地域 → 大規模な店舗・事務所の立地を一部制限する住宅地のための地域
- 準住居地域 → 自動車関連施設など沿道サービス業と住宅が調和して立地する地域
建ぺい率(%)上限が30・40・50・60
用途地域 |
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第一種低層住居専用地域 |
第二種低層住居専用地域 |
第一種中高層住居専用地域 |
第二種中高層住居専用地域 |
建ぺい率(%)上限が50・60・80
用途地域 |
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第一種住居地域 |
第二種住居地域 |
準住居地域 |
住宅に関連する用途地域(7種類)を例に比較。30%から80%まで、用地地域によって建蔽率は大きく異なる

建ぺい率の緩和
規制があるとは言え、一定の条件を満たせば建ぺい率を上げることができます。建ぺい率が80%未満の場合、ゾーニングで定められた防火又は危険排除を目的とする「防火区域」内の「耐火建築物」であれば、用途地域で規定されている建蔽率に10%加えることが可能。 「角地」の敷地であれば、延焼を防ぎ、通風を妨げないことが想定されるため、建ぺい率を10%プラスすることができるなど、土地や建物の条件によって制限が緩和されることもあります。
例えば、「防火区域」「耐火建物」「角地(※1)」の3つの条件を満たした場合、合計20%の建ぺい率を上乗せすることができます。できるだけ大きな家に住みたい場合は、これらの緩和条件を覚えておくと役に立ちます。
(※1)角地の定義は都道府県や市区町村によって異なります。
さらに、不動産業者は購入希望者に、その物件がどの「用途地域」に属しているか、どれほどの建ぺい率を持っているかを知らせる義務があります。しかし、よく理解せずに購入すると、「希望の建物サイズは50平方メートルですが、30平方メートルしか建てられないことが後から発覚した」なんてことも全くないとは言えません。建物の建ぺい率は、理想の住まいを考える上での基本的な知識だと言えるでしょう。
「容積率」は人口をコントロールするための基準。その調べ方(計算方法)
続けて「容積率」について解説します。建ぺい率はいわゆる真上から見た住居の大きさを制限しますが、容積率は「敷地面積に対する立体的な面積の割合」を計算し、制限する基準です。式は次のとおりです。

この計算からもわかるように、「延べ床面積」が容積率を決める鍵となります。延べ床面積は、各階の「床面積」の合計です。つまり、容積率は「敷地に何階まで建てられるか」を判断する指標として捉えることができます。
ちなみに延べ床面積を計算するときに除外する部分としては「玄関」「バルコニー・ベランダ」「ロフト」などと、緩和措置として面積を割り引いて換算する「地下室」「ビルトインガレージ」などの部分があります。
さて、容積率を制限する目的はなんでしょうか。簡単に言えば、人口を制限するためということになります。 「住宅」は「下水道や周辺道路などのインフラ整備」と大きく関係しています。仮にインフラが整っていないにも関わらず、建築面積の割合を増し、高層住宅のみが建設され、居住者数(人口)が増加すると、結果、町の処理能力はすぐに圧倒され、この都市は住み心地の良い場所とは言えないでしょう。したがって、容積率の基準を設定することで、建築面積をある程度制限し、その地域に住む人口を制御可能としたわけです。
建ぺい率指数と同様に、この容積率も用途地域ごとに細分化されています。
容積率
【容積率 50・60・80・100・150・200%】 ※容積率の%のうち、都市計画で定める割合
用途地域 |
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第一種低層住居専用地域 |
第二種低層住居専用地域 |
【容積率 100・150・200・300・400・500%】 ※容積率の%のうち、都市計画で定める割合
用途地域 |
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第一種中高層住居専用地域 |
第二種中高層住居専用地域 |
第一種住居地域 |
第二種住居地域 |
準住居地域 |
容積率は各市町村の都市計画で定められていますが、そのまま適用されるわけではありません。実際は建物前の道幅にも左右されるので、注意が必要です。
隣接道路が 12m 未満の場合は、まず次の式で容積率を求めます。
隣接道路の幅×0.4(※)×100%=容積率
(※) 住居関連用地の法定乗数。非住居関連の場合は 0.6 となります。
つまり、道路の幅が 4 m の場合、4 x 0.4 x 100 = 160% です。都市計画上、容積率が200%と認められていても、隣接道路をもとにした計算の結果と比較し、より小さい方をその土地の容積率とすることが規定されています。ちなみに、コーナーにある角地のように複数の道路に隣接している土地では、幅が最も広いほうを元に計算します。

また、自家発電設備として使用する面積の一定の割合が容積率に含まれない特例もあります。
建蔽率と容積率で建つ家はどう変わる?
建ぺい率と容積率で家の建て方を比較してみましょう。

このように、敷地面積が同じでも、建てられる家が大きく異なることがわかります。もちろん、現場の制約を踏まえて設計するのは建築家などのプロの仕事です。しかし、ライフスタイルに合わせてどのような家を建てるかを決め、適切な用地を探す場合、これらの制限を理解することは、理想の家を建てるための最初のステップではないでしょうか。
特に注文住宅を検討している場合は、ぜひ用語を覚えておきましょう。